ボンジュール、世界を飛ぶパラレルキャリア乗務員、フランス田舎在住YACHIです。フランスでの私のキャリアストーリーを隔月でお届けしております。
前回のコラムでは、フランスで客室乗務員として働くためには国家試験合格が必須であること、そして、第1次試験の内容についてご紹介しました。
今回は、第2次試験はどんな内容なのかお伝えしたいと思います。
まず、実技試験の試験内容項目は、水泳能力・消火活動・救急対応の3つあります。
フランス人でも難関のこの試験では、実際に客室乗務員として働く際のさまざまな場面を想定して、必要な知識やスキルが試されます。
不時着水した場合の安全確保のため、CAには水泳能力が必要という噂を耳にしたことがある方もいるでしょう。
日系航空会社では水泳能力に関する条件はないようですが、フランスではなんと泳げないと客室乗務員になれないのです!
内容項目の1つ目、水泳能力をチェックするために、2つの試験があります。
①50メートルを1分30秒で泳ぎ切る
クロールでも、平泳ぎでも、泳ぎ方に制限はありません。
ただ、フランスのプールは、場所によっては深さが2メートルほどあります。足がつく日本のプールに慣れてる私は、もし途中で苦しくなっても足がつくことができないと思うとかなり緊張しました。
②溺者を救助、一緒に25メートル泳ぎ切る
50メートル泳いだ後に、溺れてる人を助けるという設定で、溺者を引っ張って一緒に泳がなければいけません。
さすがに時間制限はありませんでしたが、25メートルの距離とはいえ、一人で泳ぐ時とは違い、体力を消耗してしまうので、意外と難しいものです。
人形ではなくて、一緒に試験を受けた人が順番に助けられる人の役割もさせられます。大きな体の人だとさらに大変です。
飛行中に起きることで一番怖いのが火災です。
以前は機内で喫煙できたので、たばこが一番の原因と考えられていました。
現在は、携帯電話、タブレット、コンピューターなどの電化製品からの発火が原因となることが増えました。一人ででいくつも持っているのが普通ですので、300人ほどもいるお客様ですから、その分だけ火災のリスクが増します。
お客様の携帯が座席の隙間に落ちた際、膝をついて、座席の下を探すこともあります。
挟まったまま、知らずに座席を動かして発火することも考えられますので、この点に関しては機内のアナウンスでも注意喚起をしています。
また、機内のビデオシステムから発火するということも考えられます。
色んな理由がありますが、火災になると一瞬で火が広がってしまい運航が不可能になりますので、命を守るためには秒単位での正しい行動が必須です。
旅行中の無理なプラン、時差での寝不足、また機内では地上よりも4倍ほど酔いがまわりやすいことを知らず、お酒を飲みすぎて気分が悪くなるお客様もいらっしゃいます。
皆さまが思っている以上に、機内で体調を崩すお客様は多いのです!
長年の乗務経験の中で、一度だけ日本人のお客様を降ろすためアラスカに緊急着陸をしたことがあります。
こういう状況は珍しいですが、軽い不調を訴える、気を失って倒られるお客様は、平均的に数回に1回の乗務の割合で起こります。
救急のシナリオは、どんな場合が考えられると思いますか?
心筋梗塞で倒れた、荷物が収納棚から落ちて怪我をした、コーヒーがこぼれてやけどをする、脱出シュートで着地ミスで足を骨折をした、腸閉塞で激しい腹痛の痛み、喉に食べ物を詰まらせて息ができないなど、いろいろ考えられます。
実技試験では、シナリオを言われて、実際に試験官の前で救急対応をします。
私は、足を骨折したシナリオでした。通常だと、板や傘など、副木になるものを使い、骨折した部分が動かないように固定します。
ただ、機内には板や傘はないので、当時はまだ機内に搭載されていた雑誌がありましたので、雑誌を丸めて足の両側に置いて包帯を巻く。研修で学んだ通りに対応しました。
包帯の巻き方も慣れていないと時間がかかるものです。そして、痛みがあれば薬を渡します。その薬の名前も正式に言わなければいけません。
実技試験の内容は、普段の乗務ではほぼ必要ないことですが、0.0001%位の確率でしか起きないことでも、もし起きた時に対応できるように国家資格を取得することが必要になります。
いかがでしたでしょうか?きっと、客室乗務員がこれほどに訓練され、国家資格を取得に奮闘しているとは想像もしなかったのではないでしょうか?
フランス人でも難関のこの国家資格ですが、私たち日本人の努力、勤勉さもあり、合格率はほぼ100%です。
Written by YACHI(フランス)