平成の日本で義務教育を受けた私は、戦争についてその歴史的背景などを俯瞰的に詳しく教わることはありませんでした。
特に日本が関わった明治以降の近代の戦争について、戦勝国や敗戦国のどちらかを支持するような発言は「なんとなく暗黙のタブー」という文化の中で育ったような気さえします。
ところが、現在世界が注目するパレスチナ・イスラエル問題について、インドネシアの子供たちは堂々と意見を口にします。
今回のコラムでは、インドネシア国内でのパレスチナ・イスラエル問題についての政府や国民の反応について書いてみたいと思います。
現在のようにパレスチナ・イスラエル問題が激化する以前の今年3月、サッカーU-20のイスラエル代表チームの入国を拒否し、インドネシアはFIFAからワールドカップ開催国の資格剥奪をされました。
インドネシア国民全員とは言えませんが、大部分がパレスチナ支持、反イスラエルです。
これは人口の約9割がムスリムで、世界一のイスラム教徒数を抱える、インドネシアならではかもしれません。
kompas.comより引用
ガザ地区への攻撃が始まって以降、インドネシア政府も公式的にパレスチナ支持の立場を見せています。
11月初旬には、首都ジャカルタの独立記念塔前でパレスチナ擁護のデモが行われ、約20万人が集まりました。このデモ集会には、外務大臣をはじめとする複数の現職大臣や、首都ジャカルタの州知事も参加しました。
大規模デモは首都ジャカルタ以外の国内の都市でも、同じくらいの規模で同月に何度か行われています。
各地で募金活動も盛んにされていて、宗教系団体は独自のルートで集まった支援金をパレスチナへ送っているようですし、インドネシア政府も国家単位で公式にパレスチナへ支援の物資を送ったりしています。
イスラエル関連商品の不買運動も大きな規模で行われるようになりました。いわゆるインフルエンサーたちもSNSでイスラエル関連商品のリストをアップして不買を訴えたりしています。
もっと身近なところで言うと、我が家の子供たちが通う学校でも不買運動が行われています。学校の先生が朝礼などで、生徒にそのことをしっかりと伝えているのです。
アメリカがイスラエルを支持していることから、イスラエルのブランドだけではなく、アメリカ資本の会社の商品も不買リストに入っています。
現に、マクドナルドをはじめとする、米系ファーストフード店へ行く人が減っています。
このようにイスラム教徒が多いというお国柄から、パレスチナ支持ムードになっていますが、個人的には政府にも学校の先生にも、特に子供たちへは、パレスチナとイスラエルの歴史的事象や背景、世界過去国の立場や意見とその理由など、広くフェアな目線で情報を伝えてほしいと思っています。
その上で、自分なりの考えがあってパレスチナ支援をするのはもちろん良いと思います。国家間の戦争でも、個人の小規模な喧嘩でも、ある一方だけを見て白黒をつけることはできないからです。
インドネシア国内のこの雰囲気から、イスラム教徒以外の国民で、イスラエル支持派でも声を上げられない人もいるかもしれません。
実際、ある有名人がイスラエルを支持するような発言をして批判され、ニュースになったくらいです。
国・地域によっては、バイアスがかかったメディアの偏った報道がされたり、自分の意見を自由に言うことができない場合もあります。
報道や言論の自由を掲げる民主主義国が多くなっている、このご時世にも関わらずです。
ありがたいことに、最近はSNSを通して紛争現場からのリアルな状況を映像で見ることができますし、テレビのニュース番組などでは報道されないことを、SNS上で伝えている人たちもいます。
中立的な立場から約2000年前からの歴史を遡りつつ、パレスチナ・イスラエル問題について解説している中田敦彦さんのYoutube大学の動画をシェアして、今回のコラムを終わりたいと思います。
【イスラエル・ハマス戦争状態①】イスラム過激派はなぜ越境攻撃をしたのか?2000年前からパレスチナ問題を振り返る – 中田敦彦のYouTube大学 (nakata-u.com)
Written by 杏子スパルディ(インドネシア)