MENU

タイ、ベトナム、世界各国で異なる母の日。女性を大切にする習慣とその背景にあるもの

2024年5月27日
大野由佳 (ベトナム)

ベトナムは女性を大切にする日が多い!?

Xin chào! (シンチャオ) こんにちは!ベトナム・ホーチミン在住のYukaです。5月12日は母の日でしたが、皆さんは各地でどのように過ごされましたか?

私は日本の両母にカーネーションの鉢植えとお菓子のギフトを贈りました。離れていても、少しでも気持ちが届いたらと思います。

ところで、ベトナムでは母の日は5月の第2日曜日ではないということを、私は住んでみて初めて知りました。実際、当日は街中を見渡してもどこにも「Mother’s Day」らしき雰囲気がほぼ感じられず、至って普通の週末でした。

実は、ベトナム人にとって母の日に相当するのは旧暦7月15日の「中元節」。日本では「お盆」にあたる日なのだそうです。

ベトナムは、家族の繋がりをとても大切にする文化です。母の日には母親が存命している場合は赤かピンクのバラを、すでに他界している場合には白のバラを身につけて寺院へお詣りに行き、母や家族への感謝の気持ちを表すのだそうです。

ベトナムには他にも女性を大切にする日があります。バレンタインデーや国際女性デーといった世界に共通する記念日に加えて、「ベトナム女性の日」というものがあります。

このような記念日には、基本的に男性から女性にお花やギフトをプレゼントする風習があり、街中にもバラの花を売る屋台が溢れ、花束を抱えた男性やカップルをよく見かけます。

その中でも最も重要とされるのが、10月20日の「ベトナム女性の日」。この日は企業でも女性社員へのプレゼントや感謝イベント、食事会などが企画されます。

この日をおろそかにすると、女性社員の離職にもつながると言われているほど、年間で最も重要な日と言えます。

 

タイの母の日は国中が水色に

このように、国ごとに記念日が異なるケースはよくあります。

タイに住んでいた時は、母の日は毎年8月12日でした。これは、現在の国王ラーマ10世のお母様である「王太后シリキット」のお誕生日にちなんでいます。「タイ王国の母」という位置付けなのでしょうね。

また、タイには曜日ごとの「色」が決まっており、生まれた日の「曜日の色」を大切にする風習があります。

王太后シリキットは金曜日生まれで、この日の色は「水色」。そのため母の日には、街中が水色のデコレーションで溢れます。

そして、タイの母の日の花といえば、ジャスミンです。写真のように、ジャスミンの花を繋ぎ合わせた「プアンマーライ」と呼ばれる花数珠を、子どもからお母さんにプレゼントする習慣があります。

ジャスミンの白さと長く続く香りに、純粋無垢に子を愛する気持ちと、末永く愛情を注いでくれる母を象徴しているのだそうです。

私も息子たちが学校で作ってきたプアンマーライをもらったことがありますが、ぷっくりとした可愛らしいジャスミンの蕾がとっても良い香りで、部屋が幸せな香りに満たされたのを今でもよく覚えています。

 

ベトナムの女性の就業率は70.9%

東南アジア諸国に共通することでもありますが、社会における女性の存在感は日本に比べると大きく、ベトナムでも女性の方がよく働き、活発な印象を受けます。

実際、国際労働機関(ILO)の2019年のレポートによると、ベトナムにおける女性の就業率は70.9%と高く、これは世界平均の47.2%未満をはるかに上回ります。

このようにベトナム社会における女性の存在感を象徴するかのように、生活と国づくりを支えてきたベトナム女性にスポットを当てた「ベトナム女性博物館」が首都ハノイに、姉妹館として「南部女性博物館」がホーチミンにあります。

ベトナム女性の愛国心と伝統を後世に伝えるために、前世代の女性の希望と意志に従って建てられたのだそうです。館内は無料で見学することができます。

私もホーチミンの「南部女性博物館」に実際に足を運んでみました。伝統衣装のアオザイのコレクションから日常の生活の様子、戦時中の女性の参戦や国家のために国内外での活動の軌跡などが展示されていました。

実は、ベトナムの現代女性の社会進出は戦争によってもたらされたという背景があります。

そこには複雑な思いもありますが、ベトナム人女性たちの代々受け継がれてきた愛国心や伝統を重んじる気持ちや、「後世に残したい」という思いは伝わってきました。

私がこれまでに滞在してきたシンガポール、タイ、ベトナムだけを見ても、同じ東南アジアの国々にも異なる歴史的背景があります。文化的にも人の気質もそれぞれ似ているようで、異なる面も多いと感じます。

その成り立ちや意味についても関心を寄せてみると、思わぬ発見やその土地の人々の暮らしや価値観への理解が深まるのではないでしょうか。

私自身、もっとベトナムという国を探究してみたいと思いました。

Written by 大野由佳(ベトナム)

この投稿をシェアする

イベント・セミナー一覧へ
コラム一覧へ
インタビュー一覧へ
ブックレビュー一覧へ
セカウマTV一覧へ
無料登録へ