ストックホルム中心部、オルフパルメ事件の舞台となった階段
公開から30年以上経っても人気のアニメーション映画『魔女の宅急便』(スタジオジブリ制作)。ストックホルムは作中で主人公キキが住むことになったコリコの街のモデル都市です。
ストックホルムの街づくりは13世紀半ば、1つの島に城砦が築かれたことから始まったと言われています。
現在では14の島から成り立ち、「水の都」「北欧のヴェネツィア」とも呼ばれるため、水辺にある平らな土地というイメージが強いストックホルム。
実際にはコリコのように丘も多く、地形を活かした坂と階段が入り組んだ造りも興味深い街です。
今回は美しい階段の写真を多めにお届けしますね。
見上げるほど高い階段とその上に広がる住宅街
こちらは市内中心部にほど近い住宅街。大通りからふと目をあげると天にも届きそうな階段が。
首が痛くなるほどの角度ですが直線的で石を積み上げた姿が美しいです。この上にもまた住宅街が広がっています。
年配の方が上り下りされるのをよく見かけるのですが、みなさんかなりシャキシャキ歩いていて、日頃から鍛えることが大切なのだなぁと実感します。
そして、次にご紹介するのは通る度に不思議な気分になる階段。
ストックホルム中心地クングスガタン(王様の道)へと降りる階段
こちらの階段もストックホルム中心街にあります。
撮影した場所には住宅や教会もあり、写真内左で車が走っているのも確認できるほどの大きな通りですが、階段を降りた先もまたクングスガタン(王様の道)と呼ばれる大通り。
その先にはショッピング街が続き、歩いて行くといつの間にか、この写真の車が通っている道路の先に繋がっているのです。
階段とトンネル、坂が組み合わさったこの街を歩いていると、騙し絵の世界にいるような不思議な感覚にとらわれます。
首相暗殺事件の現場となった、ストックホルムで一番有名な階段
ストックホルムの階段は、歴史の舞台にもなっています。
この街で一番有名な階段はスウェーデン中を揺るがした大事件の舞台。1986年2月のある夜、この階段の前で当時のスウェーデン首相が暗殺されたのです。
その日に限って護衛を早く帰宅させ、夫人と2人で映画館から出てきた直後の出来事。そして犯人はこの階段を使って逃走するのです。
実は、トップの写真とこの写真は、階段下の部分がトンネルで繋がっていて、2つで1セットになっています。どちらの写真でも中央下部に見えているガラス扉がトンネルの入口です。
急な階段を上り下りしなくても丘の反対側へ抜けられる造りですが、この犯人はトンネルではなく階段を使って逃走。
目撃者によると、犯人はトップの写真の階段を駆け上がり、その先にあるこの階段を駆け降りた後、路地に入り姿を消したそうです。
事件は多くの謎に包まれたままで2020年には捜査も打ち切りとなり、今もさまざまな憶測を呼んでいます。
上記の階段をつなぐトンネルの内部
こちらは事件現場となった2つの階段を繋ぐトンネルの内部。
トンネルには雪や寒さを避ける意味もあるそうで、特に冬の間は階段が凍って危険なこともあり、トンネルの利用者が増えます。
内部には岩盤を剥き出しにしている箇所もあるので、トンネルが作られた場所がどのような地質なのかも見ることができます。
日本のニュースでは先進的な取り組みが話題になることの多い北欧ですが、訪れる際にはぜひ、何世紀も前に北国の硬い岩盤を手で削り、この美しい街を造りあげた先人たちにも思いを馳せていただければ嬉しいです。
ストックホルム、セーデルマルム島の丘に建つアパートメント群
Written by 高見節佳(デンマーク)