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ジョージアにおけるロシアの影響を受けて感じること

2022年11月14日
宮下なみ子 (ジョージア)

プーチン踏み絵ステッカー。ごくごく普通のアパートの階段にて

ロシアがウクライナを侵略して早8ヶ月経過。今も戦いは続く

გამარჯობა !!(ガマルジョバ!)こんにちは、ナミです。

今回はセンシティブなテーマを。ロシアによるウクライナ侵略の話です。今年の2月末、ロシアがウクライナへ軍事侵攻しました。11月の現在も戦いは続いています。

今回のウクライナ侵略前から、ジョージアは反ロシア感情を持つ国です。ジョージアもロシアも1991年まではソビエト連邦の構成国でした。

91年にソ連崩壊以来、ロシア支配からの脱却を図っていました。が、2008年のロシア・ジョージア戦争以降、両国は断交中。現在もジョージアは20%もの国土をロシアに不当に占領されています。

ウクライナ侵略は人ごとではなく、私たちがジョージアに移住した去年6月時点でロシアンヘイトは見かけました。

写真は去年見かけたアパートのマンションの階段。プーチンのステッカーが貼ってあり、帰宅するたびにプーチンを踏みつけることができる便利グッズです。

また、ラベルデザインでロシアへの気持ちを表現しているワインにも出会いました。

ぶどうの実がジョージアの国の形になっているオシャレなデザインですが、よく見ると実がついていない部分が。この部分がロシアに侵略された地域です。(写真はコラムの最後に)

 

戦争を通して感じる、国民性の違い

今年3月頃、首都トビリシでの大規模抗議デモの様子

戦争は間違いなく悪いことです。誰かが不当に傷つけられたり命や安全を奪われることはあってはなりません。この考えはジョージアも日本も同じ考えです。

ただ「戦うこと」に関してはジョージア人と日本人は少々考えが異なるように感じます。

調和を何よりも重んじる日本は「主張することは迷惑になる」という価値観の人が多く、「終息させるためにウクライナは降伏して国民の命を守るべき」という意見もニュース等で目にしました。

しかし、ジョージア、ウクライナ含めコーカサスの人々は主張することを恐れません。いえ、陸の国境がある国つまり世界の大半の国がその感覚のようです。なぜなら主張を止めると国はどんどん奪われてしまうからです。

そもそも国境がある時点で何かしらの主張がぶつかっている(いた)のです。ぶつかるたびに譲っていたら国は消滅し、挙げ句の果てには言葉や文化も奪われます。

例えば日本がなくなって、ある日突然「ロシア語や中国語なりを使え!」と言われたら辛いですよね。日常生活だけの問題ではなくアイデンティティが崩壊します。

寿司や相撲などがロシア文化や中国文化として語り継がれたらどんな気持ちになりますか。

「そんな大げさな!」と思われるかもしれませんが、例えば世界三大スープのひとつとして有名なボルシチは、日本ではロシア料理として紹介されていますが、本来はウクライナ料理です。

このように寿司が違う国の文化として語られるのは現実に起こりうることです。

 

ジョージアの現在の治安と肌で感じる経済成長

おしゃれなお店がどんどん増え、経済発展を肌で感じています

ジョージアの現在の治安ですが、侵略が起きた春頃は毎週のように抗議デモが繰り広げられていましたが、最近は見かけなくなりました。またデモと言っても乱闘騒ぎが起きる訳ではありませんでした。

「海外のデモ」というと、警察が市民を押さえつけたり軍隊が出てきて制圧したり…といった暴力的なイメージかもしれませんが、それは他国のニュース。

ジョージアにおいては政府も国民も反ロシアなので同じ方向を向いており衝突していません。そのため暴力も発生せず、むしろ警察は交通整理をしてデモを応援するほどでした。

9月下旬に発令されたロシアの動員令により毎日1万人といわれる大量のロシア人がジョージアに逃れてきました。

その影響で首都トビリシでは人が溢れ、渋滞や満員電車が当たり前になり家賃も高騰しています。家賃を不当に上げられ、追い出された日本人の友人達の話も聞いています。

このような現状に「ロシア人は出て行け!」と声を上げる人もいますが、目立った衝突は発生していないようです。

ロシア人の流入によりカフェやレストランは増え、不動産は売れ、ジョージアは経済的な恩恵を受けているのもありますが、困っている人がいたら手を差し伸べるジョージア人の国民性も多大にあると思います。

それでも多くのジョージア人は「ロシア人は嫌い」と即答しますし、ただ可哀そうという言葉だけでは片付けられない複雑な感情が入り乱れています。

 

今は日本にとどまるべき?それとも「今だからこそ」世界に出るべき?

早朝のトビリシはとっても静か

私はジョージア移住の相談・サポートも行なっていますが、このような状況下なので、移住相談者さんの中には「今は時期じゃないので、良いタイミングになるのを待ちます」という方もいれば「今だから」と移住される方もいます。

ただでさえ勇気が必要な海外移住。誰だって直前は怖くなって、行かない理由・やらない理由を探し出すものです。

そこにさらにコロナ、ウクライナ侵略、円安!と行かない理由の方が多い状態です。

しかし2年後、3年後に状況が好転する保障はどこにもありません。確実に言えることは、2年後は2年老いていて、3年後は3年老いている未来です。

そこを天秤にかけて「自分にとっては今だ!」と決断・行動される方はマインドセットができている状態なので、この時期に出会う人は精神力が強い人が多い印象です。

今、動くべきか?それともタイミングを待つべきか?その判断が正しいかどうかを決めるのは未来の自分。そもそも、それが分かったら人生苦労しないわけで。そして、未来が分からないからこそ人生は楽しいのです。

ラベルデザインでロシアへの気持ちを表現しているワイン

Written by 宮下なみ子(ジョージア)

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