Sydney WorldPride 2023、人間の真のパワーが世界を虹色に変えていく

虹色に染まるシドニー

虹色に光り輝くシドニーの街。2月17日に盛大に幕を開けたLGBTQIA+の祭典、Sydney WorldPrideが未だかつてない盛り上がりを見せている。

世界的に有名なLGBTQIA+の祭典、シドニー・マディグラ(Sydney Gay and Lesbian Mardi Gras)。

そんなメガ祭りのシドニー・マディグラは、今年めでたく45周年を迎えた。それに加えて、世界の都市で持ち回りで行われているWorldPrideのホストシティとなっているシドニー。

WorldPrideは2000年にイタリア・ローマからスタートした、LGBTQIA+の人権問題について世界レベルで考える国際イベント。ローマ以降の開催都市は、エルサレム、ロンドン、トロント、マドリッド、ニューヨーク、コペンハーゲン、マルメである。

3月5日まで続くこのメガ祭りの期間中、街のあちこちで、LGBTQIA+パーティー、映画祭、アート展、LGBTQIA+の人権などに関するパネルディスカッションなど、他にも多数のイベントが行われている。

中でも、2月25日に行われた超目玉イベントのLGBTQIA+パレードは、100万人以上の観客を動員した。

毎年2週間以上にわたって行われるこのお祭りを一目見ようと、国内外から膨大な数の観光客が押し寄せ、今年の経済効果は約110億円に上ると言われている。

同性愛者達の勇気による新世界の幕開け

ここでシドニー・マディグラの始まりについて触れておこう。

1978年6月24日の夜10時、冬の寒空の下、奇抜な装いにメークアップといういでたちのゲイ、レズビアン達約500人がシドニーの街のテイラースクエアに集結した。

この日、ゲイであることを称える歌を大音響で流しながら、同性愛者の人権尊重を求めてOxfordストリートをデモ行進した彼らが、現在のシドニー・マディグラの生みの親である。

しかしながらこの当時、同性愛者を取り巻いていた環境は非常に厳しいものだった。

シドニーが州都のニューサウスウェルズ州では同性愛は法律で禁じられており、それに加えて「同性愛は人間のモラルに反する」という確固たる考えを持つ市民が大多数を占めていた。

そのような社会的風潮の中で、1790年から2010年の間、同性愛者達が市民や警察から殺害される事件が頻発していた。

Gay Gang Murders（同性愛者リンチ殺人）と呼ばれるこの事件、 この犯罪の発生率が最も多かったのは1987年から1999年の間で、その犯人達の多くが10代の若者グループだった。

そんな状況にさらされていた当時の同性愛者達が当時デモ行進を実行することは、相当な覚悟が必要だっただろう。

彼らは常に自分のSexualityをひた隠し、罪悪感に苛まれ、そして身の危険、命の危険をも感じながら生きていたのである。

だが、彼らが奮い立たせた勇気とプライドが、この日を境に少しづつ世界を変え始めることになった。

プライドと信念が実現する理想の社会

2023年の現在、世界中から観光客を集める「ドル箱イベント」へと変貌を遂げた、シドニー・マディグラ。

1978年当時、同性愛者の人権尊重デモ行進だったものが、現在では華やかなパレードに様変わりし、参加者達も「Happy Mardi Gras!」と歓喜の雄叫びで自由を称える人々となったのだ。

今でもLGBTQIA+の人たちへの偏見や差別はあちこちに見え隠れしているが、彼らの人権尊重を求めて声を上げる人々は確実に増え続けている。

そして、そんな彼らの粘り強い活動と確固たるプライドがオーストラリア政府と国民を大きく動かしたのが、2017年12月9日。この日を境に、同性同士の婚姻が合法となったのだ。

今年は私もWorldPrideのホストとしてのマディグラパレードをひと目見ようと、シドニーのLGBTQIA+のハブであるOxfordストリートに、パレード開始の3時間半前に陣取った。

趣向を凝らしたたくさんの山車と共に、性別、年齢を問わず、きらびやかな衣装や賑やかな音楽で踊りながら行進する人々を観ながら、人間に本来備わっているエネルギーって無限大なんだと改めて感じた。

そんなきらびやかなパレードの途中で、いきなり私の目を釘付けにした一組のカップル。

仲睦まじく寄り添う彼らがこの満面の笑顔にたどり着くまでに、私には想像もできないような想いをたくさん味わってきたのだろう。

それでも二人で手を取り合って遥かなる道のりを歩んできた彼らの笑顔に、私の心は今も鷲掴みにされたままなのだ。

Written by 野林薫（オーストラリア）