インドネシア人夫とインドネシア生まれ・インドネシア育ちの子供たち、という家族構成の我が家の食事メニューは、8割方がインドネシア料理です。
子供たちが小さかった頃、そして会社員として働いていた頃は、生活の中で「時短」を最も重要視していたため、ペースト状になった市販のスパイスミックスなどを使って料理をすることが多かったです。
でも、会社員を卒業しフリーになってからは、これまで時短中心だった生活から「『丁寧な暮らし』を大切にしたい」という自分なりの人生のフェーズに入り、特に食に関して使う時間やエネルギーが大幅に増えました。
食は何千年もの歴史の中で、その土地の風土や文化の中で育っていったもの。
長年インドネシアに暮らしていながら、食に関しては今までただ「おいしいな」という表面的な部分しか考えたこともなかったことに気がつきました。
それ以降、今まで意識もしていなかったインドネシア料理に使われる一つ一つのスパイスを丁寧に準備して料理することで、食事を作る工程から「食の豊かさ」を味わうことができるようになりました。
生のスパイス類を使うようになってから、味に深みがでるためか、インドネシア人夫と子供たちからも、これまで以上の「おいしい!」をもらえるようになりました。
スパイス一つ一つを準備しながら、「これは天然のうまみ成分」「これは臭みを消す南国の暮らしの知恵」など、その意味を考えながら食材の準備をするのは、マインドにも脳にも良い効果があるような気さえしています。
食文化の歴史や一つ一つのスパイスのことをもっと知りたくなり、読んだ日本・インドネシアの書籍からも多くを学びました。
日本で出汁にあたるものはインドネシアでは何なのか、インドネシア料理の調理方法や調理器具はどのような歴史があって今のような形になったのか。中国、インド、中東からどんな影響を受けたのか。
そんな食の世界を頭の中でイメージするのも楽しい時間です。
今までSNSでレシピを見ていいなと思って保存するも、結局作らないものばかりでしたが、インドネシア料理のレシピ本を買って以来、スマートフォンの画面で見るレシピとは違う良さを感じ、インドネシア料理のレパートリーも増えました。
奥深く広いインドネシア料理とスパイスの世界を知ると、外食でも料理に対してありがたみをさらに感じます。
「何百年もこの地で食べられてきたメニューだ」と感動してみたり、「多くのスパイスを手作業でプロセスしてこのソースはできているんだ」と作り手さんたちに感謝の気持ちが湧いたりするようになり、食べる楽しみが広がりました。
食事をしているだけで、気持ちは大忙しとなります(笑)
アジア・エスニック料理というと、まだまだタイ料理やベトナム料理の知名度が高いかもしれません。
でも、もしお住まいの地域でインドネシア料理のお店を見かけたら、ぜひこの奥深いインドネシア料理の世界を味わってみてください!
Written by 杏子スパルディ(インドネシア)