今年のレバランに自宅用に買ったクッキー詰め合わせ。中央がputri salju
イスラム歴9番目のラマダン月の断食を終え、今年は4月10日に「レバラン」を迎えました。国際的には「イード(Eid al-Fitr)」と呼ばれる断食明け大祭のことです。
インドネシアのレバランに欠かせないものと言えば焼き菓子(クッキー)です。レバランの時期にクッキーを食べるという伝統は、かつてインドネシアを植民地支配していた宗主国オランダに由来すると言います。
今回のコラムでは、インドネシアでレバランの時に食べられるクッキーの特徴やその由来についてご紹介します。
元来インドネシアでは、イスラム教徒の大切なレバランのお祝いの際にもち米、サゴ椰子、米粉などを使って作られる、お餅やゼリーににた食感の伝統的なお菓子が食べられていました。
植民地時代に入ると、オランダから持ち込まれたドライな質感の焼き菓子クッキーが、日持ちがするという理由からインドネシア人の間でもレバランの時期に真似をして作り食されるようになったといいます。
レバランといえば欠かせない定番中の定番が「Nastar」です。その名は、オランダ語でパイナップルとケーキを意味する「ananas」と「taartjes」から来ていると言われています。
植民地時代にオランダが持ち込んだものにはイチゴやリンゴのジャムが使われていたそうですが、インドネシアでは容易に入手可能なパイナップルのジャムがクッキーの中身に使われるようになりました。
入手の容易さだけでなく、イチゴやリンゴのように甘味と酸味を持ち合わせていることから、パイナップルが使われるようになったとも言われています。
親族へのギフト用に購入したクッキー詰め合わせ。左側がnastar
Nastarと並んで、レバラン時期に食べられるクッキーの定番といえば「kastengel」です。
オランダのkaastengelsというお菓子が由来で、「kaasがチーズ」「stengelsが棒状」のという意味だそうです。高級食材のチーズが使われたこのクッキーは、特別なお菓子だったようです。
ドイツ生まれのクッキーがオランダ経由で伝わったという「semprit」も、詰め合わせのクッキーに大体入っています。絞られ生地を焼くのが特徴のクッキーです。
猫の舌を意味する「lida kucing」というクッキーはその名の通り形状が薄くて長い猫の舌のような形のクッキーで、オランダ語でも同じ意味を持つ「katte tong」といわれます。
最後に、ドイツやオーストリアでよく食べられたいたというクッキーと、味も見た目も全く同じものがインドネシアにもあります。
白雪姫を意味する「putri salju」というクッキーです。オーストリアでクリスマスに食べられる「Vanillekipferi」が原型ではという説にも納得の同じ見た目をしています。
今年のレバランに義実家で食べた、左上kastengel、右上nastar, 右下semprit
このように、オランダ経由でヨーロッパ各地のお菓子が持ち込まれたことがわかります。
インドネシアでは毎年レバランの前になると、これらのクッキーを手作りして販売したり、スーパーマーケットでも売られたりしています。
また、大手のケーキ・パンのブランドからもギフト用に詰め合わせになって販売され、一つのクッキー商戦となっています。
価格も年々上がっていて、最近では一種類のクッキーが日本円で700-800円から、高級なものだと詰め合わせで1万円くらいするようなものもあります。
年に一度のお祝いに欧米のクリスマスギフトや、日本のお歳暮のように親族・友人、また企業が取引先などにこのようなクッキーを送り合う文化があります。
私も毎年「今年のクッキーはどこでどんなものを買おうかな」と、年に一度の楽しみにもなっています。
Written by 杏子スパルディ(インドネシア)