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親の看護で一時帰国して考えさせられたこと【後編】

2023年8月14日
林いくえ (カナダ)

海外在住者があらかじめ考えておくべきこと

【前編】はこちらから。

カナダ在住の私が5月中旬に父の看護で一時帰国してから2カ月半経ちました。

いつか親の老後問題に直面することは覚悟していましたが、あらかじめ考慮しておくべきだったことや家族と話し合っておくべきだった点が、思った以上にたくさんあると気づきました。

まずは、看護について。病気で入院や通院が必要な時に看護をするのは誰か、どのように役割分担するか。海外在住の場合、どの頻度で帰国でき、どんな形の貢献をどの程度できるか、などです。

その時のライフステージによっても違ってくると思いますが、あらかじめ計画を立てておくことで状況に応じてプランを変更でき、緊急時に慌てずに済むと思います。

次に住居について。親が一人暮らしができるうちはまだいいのですが、病気や老いで一人暮らしが難しくなった時のアレンジメントはどうなるか。誰かと住むのか、一人暮らしで介護をつけるか、それとも施設を考慮するのか、など。

切り出しづらいトピックではあるかもしれませんが、家族全員が同席できる場で話し合い、同意できる答えを出しておくことで、必要性が出てきた時に「負担だ」「捨てられた」など、お互いが傷つくことを最小限に抑えられるのではないかと思います。

 

終活の大事さ

カナダでは、遺書を作成することが若いうちから普通に行われますが、私たちも子供たちがまだ幼かった頃に作成してあります。

今回の経験を通して、経済状況や必要な書類はどこに収納してあるか、財産分割の意図、代理委任は誰かなど、後でもめごとにならないためにも、こういった終活は健康なうちから家族で始める必要があると痛感しました。

何らかの理由で話し合いの場を持つことが難しい場合は、ご両親がご自身で終活をしておくように薦めることも大事かと思います。

終活をしていれば、全く準備ができていなかった私たちのように、父の緊急手術当日に私が慌ててメモをとるというような必要のないプレッシャーを免くことができます。

 

遠くの親戚より近くの他人?

海外在住が長い私たちにとって、現実の生活は「遠くの親戚より近くの他人」という感覚がありますが、実際に「家族は近いようで実は遠い存在である」と感じたのは初めてでした。

それでも、家族とは切っても切れない繋がりや絆があります。

家族だからこそ話しづらいこと、傷つけたくないと思うから本音で言えないこともたくさんあり、お互い大人のはずなのに、親と子の関係は何歳になっても変わらないということも痛感しました。

頼ってきた親を自分が看護するというのも不思議な気持ちです。

今、この人生のステージに直面し、初めて思うことが溢れるほどありました。

直面して初めて分かることもある一方、いずれやってくるこの時のために、実質的な準備、そして心の準備を整えておくと、スムーズに迎えることができ、より穏やかに乗り越えることができると思い、前編・後編の2回に分けて共有させていただきました。

Written by 林いくえ(カナダ)

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