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日本人とオーストラリア人の「仕事を休む」ことに対する感覚の差

2023年8月12日
野林薫 (オーストラリア)

休暇申請がドキドキだった日本でのOL時代

日本で20年間のOL時代を過ごした私。当時は、毎年夏休みを取って旅行に行くことが楽しみだった。

夏が近づいてくると、人事課から休暇申請を早めに提出するように通達が出た。当時はA4サイズの有給休暇申請用紙に手書きで記入して、先ずは直属の上司に提出する。

30代半ば、勤続10年以上になり、仕事にも職場にも慣れたベテランOLだった当時の私。土日と有給をくっつけて、5日間ほどの休暇が私の毎年の夏休みだった。

私の有給休暇は毎年約40日あったのだが、その40日間の中から3日間を使うことに、年一回だけのことにも関わらず、なんだか心が少しだけざわざわしていたものだ。

私がOLをやっていた当時は、「仕事を休む」ことを良しとしない空気が流れていた。

ある年の冬の初めにイタリア旅行を決めて、緊張しながら課長に「土日含めて8日間の有給休暇申請書」を提出した。

課長の口から出た言葉は、「え?何?8日も??」。驚きを隠せない課長の顔をできるだけ見ないようにして、「あ、はい。イタリアに行くんです。すみません」と囁いた。

「こんなに長い有給取って、みんなになんて思われるかな?」と、イタリア出発当日まで、なんとなく罪悪感を感じながら仕事をしていた。

 

「仕事を休む」ことは職員が持つ権利

オーストラリアで働いて約17年。

「オーストラリアは従業員の権利がよく守られている国だ」という言葉をよく耳にする。私のオーストラリア人の同僚や、ニュージーランド人の同僚もこれをよく口にする。

私自身もこれには賛成の立場である。

もちろん業界によっては、有給が取りにくい所もあるのかもしれないが、私の現在の職場は「休みたい時はいつでも休む」という環境だ。

有給休暇の申請も、自分のスマホに搭載している「職員アカウントアプリ」でサクサク申請できる。そして申請後、ほぼ2、3日で承認メールが送られてくる。

日本のOL時代に神妙な面持ちで緊張しながら、A4の休暇申請用紙を課長に提出していた自分を思い出すと、なんだかちょっと笑いが出そうになってしまう。

 

オーストラリアの人達が仕事を休む時

さて、ここで私の同僚の「有給申請スタイル」を紹介しよう。

オーストラリア人同僚。「最近なんか疲れちゃっててさー。明日、休もっかな」と独り言を言いながら、私の横でスマホを見ていた。「私の病欠休暇、あと何日残ってんだろ?あれ、ほとんど残ってないわ。ま、いいや。私、明日、休むわ」と、スマホでサクッと病欠申請した同僚は、翌日お休みだった。

別の日には、ニュージーランドの同僚がボソッと、「今度の土曜日さ、休みたいんだよねー」と。何か用事があるのかと聞くと、「いや、特にはないんだけど、休暇申請の理由、どうしたらいい?」と私に聞いてきた。

「私に聞かれてもなー」と思いつつ、「孫を預かって面倒見ないといけなくなったとかにしたら?」という私のアドバイス(悪知恵?)に、「良い考えー!ありがとー!」とその場でサクッと休暇申請を済ませた。

インド人の同僚。ここ数年、故郷のインドに帰っていないから両親に会いにインドに行く、という理由で、6週間の有給休暇を申請した。申請は受理され、同僚は故郷で家族との時間をゆっくりと過ごした。

まぁ、この同僚の「6週間連続休暇」を境に、「有給休暇は最長で4週間まで」という規定ができたのだが、4週間でも十分長いですよね。

元気に明るく働くには、十分な休みは必要不可欠。ワーク・ライフ・バランスの意識が高い系の人達により、私の「仕事を休む」ことに対する意識は、今ではバラ色なのである。

Written by 野林薫(オーストラリア)

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