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ブラジル在住フルート奏者が伝えたいブラジル音楽と背景にある歴史と文化

2021年6月24日
ひろみ (ブラジル)

多民族国家ブラジルならでは、独特の音楽背景

Olá!! ブラジル在住のHIROMIです。私はフルート奏者です。演奏する曲は日本の音楽、ブラジルの音楽、世界の音楽と様々です。

ブラジル音楽はブラジルに移住してから勉強したのですが、今では私の音楽人生になくてはならないものとなりました。

ブラジルには音楽を聴ける所が沢山あります。音楽を国民に聴いてもらうために基本的に低価格になっており、小さな子供連れでも行ける施設が沢山あります。

音楽は人の心を豊かにさせます。常に身近に音楽があるブラジルでは、おおらかな心を持つ人が多いように感じます。

さて、皆さんはブラジル音楽といえば、何を思い浮かべますか?

一般的にブラジルと言えば、カーニバルのサンバミュージックを思い浮かべる方が多いと思います。

確かにサンバは世界的に有名ですが、飽くまでブラジル音楽の一種に過ぎません。日本でも有名なボサノヴァ、こちらもブラジル音楽の一種に過ぎないのです。

それでは、他には何があるのでしょうか?

ブラジルは日本の国土の22.5倍、人口も倍なので、その分音楽の種類も沢山あるのです。

それを是非知っていただきたく、今回はブラジルの音楽について書きます。最後までお付き合いください。

 

ブラジルの歴史が音楽に関係している

油絵で描かれたポルトガル人達がブラジルに着陸した時の様子

ブラジル音楽が創られたきっかけには、ブラジルの歴史が大きく関係しています。

ブラジルは約8000年ほど前、最初のアメリカ大陸先住民の移住者が現在のブラジルに定住した後、約520年ほど前にポルトガルの海洋探検家によって発見されました。

そして16世紀の初頭、ヨーロッパの封建制度の抑圧から逃れて、多くのポルトガル人が、次いでイタリア、ドイツなどヨーロッパ各地の様々な階層の人々がこの新天地に移住しました。

更にアフリカから連れてこられた黒人奴隷たちも加わり、原住民インディオの文化も混じり合って、400年余りの歴史の経過のうちに、南米の中では唯一、ポルトガル語を公用語とする独自の文化圏が発展しました。

ポルトガルの植民地時代を経て1822年にブラジル帝国として独立し、その67年後の1889年に連邦共和国となり、王政が大統領制に移行し、現在に至ります。

ブラジルの音楽の歴史はこうした国の歴史を背景に発生し、発展を続けて、多民族国家ブラジルならではの独特の音楽文化ができあがっていったのです。

 

ブラジル音楽の種類はこんなにある!

音楽の種類が多い分、奏でる楽器も多い

ブラジル音楽の主な種類を挙げてみますと、以下のようになります。

・サンバ:ブラジルを代表する国民的な音楽
・サンバ・カンサォン:ボサノヴァが流行る前の土壌となる音楽
・ボサノヴァ:サンバの発展系の音楽
・ショーロ:楽器だけを用いたインスツゥルメンタル音楽
・サンバ・ショーロ:サンバの影響を受けて、よりビート感が強くなったショーロ音楽
・MPB:「Música Popular Brasileira」の頭文字を採ったブラジルのポピュラー音楽全般のことを指す
・セルタネージョ:田舎風のカントリーミュージック
・ファンク:ファベーラ(スラム街)で人気の高い音楽
・パゴージ:少人数で楽しむ日常的なサンバ
・ファホー:ブラジル北東部のカントリーミュージック
・サンバヘギ:サンバとレゲエの融合
・アシェ:ブラジル北東部のアップテンポな
・マラカテュ:ペルナンブーゴ州の伝統音楽
・マルシャ:マーチ、行進曲(軍隊)
・マシーシ:1850年頃、ブラジルで大ブームになったジャンル。ポルカやマズルカが黒人音楽の影響を受けてブラジル風に変化したもの
・フレーヴォ:リオデジャネイロで生まれたブラジル版タンゴ、マシーシやポルカマルシャなどをベースにした音楽
・カポエイラ:ブラジルの奴隷たちが練習していた格闘技と音楽の融合
・サンバ ヂ ホーダ:バイーアで生まれたサンバ
・ポルカ、マズルカ:ヨーロッパで流行した自由な舞踏形式。ブラジルに渡ってショーやサンバの源流になったと言われています。

他にも、クラシックやジャズ、ロック、宗教音楽、地域によって様々な音楽ジャンルが存在します。

サンバやボサノヴァは、ブラジル音楽の中でわずか一握りに過ぎないということがお分かりいただけたでしょうか。

 

ブラジル音楽の新たな風

ブラジルで活躍する日本人ギタリスト金田聖治さん

ブラジルでは、「これがサンバだ!」「ボサノヴァだ!」と純粋に呼べるものは、ほぼありません。あらゆるジャンルが混合されているのが、ブラジル音楽の大きな特徴とも言えます。

例えば、ブラジルにおけるジャズミュージックはサンバやボサノヴァを融合させて、ブラジリアンジャズと言われています。

ブラジルで活躍する日本人ギタリスト金田聖治さんはブラジリアンジャズを演奏し、さらに和も融合させた新たな音楽を生み出しています。

実はボサノヴァはブラジルでは古いジャンルと言われており、現在では聴く人は限られてきています。

このように新たな風を吹き入れることで、次世代のブラジル人、そして世界へと広がり、ボサノヴァという音楽はなくてはならない種類となっているのです。

Netflixで、ボサノヴァをテーマにしたブラジルのドラマが放送されています。ご興味ある方は「ビューティフル・シングス / 人生にボサノヴァを」で検索してみてください。
 

お祭りに欠かせないブラジル音楽は?

ブラジルでは、FESTA JUNINA(フェスタ・ジュニーナ / 6月のお祭り)という風物詩があります。

このお祭りで流れる代表的な音楽はブラジル北東部のカントリーミュージックForró(フォホー)。

フォホーという言葉の語源は、英語の「Music For All」(全ての人のための音楽)。それが訛って「フォホー(フォロー)」になったと言われています。

この音楽を演奏する時の典型的な楽器編成は、アコーディオン・トライアングル・ザブンバです。

アコーディオンという楽器はメロディ、ハーモニー、リズムという音楽の三要素を一人で表現できるので、ブラジル国内のほぼ全域でとても重宝されています。

ブラジルの有名ピアニストの多くが、はじめて鍵盤を触ったのはアコーディオンと言われるくらい、ブラジルではなくてはならない鍵盤楽器なのです。

また、フォホーで使われるトライアングルは一般的なものとは違います。

誰でも知っているトライアングルは三角形をした鉄の棒をまっすぐな鉄の棒で叩きますが、大きく太いトライアングルを直に持ち、その三角の中に棒を入れてかき回すように叩くのがフォホーの演奏法です。

フォホーの典型的なトリオバンド、聴きながら読めばブラジル感満載!

ザブンバは太鼓の一種で、これはアラブ系の移民がブラジルに持ち込んだものと言われていますが、胴の両面に皮が張ってある、太鼓としては世界中によくある形です。

ザブンバはこの表と裏のコンビネーションで低音リズムを作っていきます。トルコや東ヨーロッパで同じような太鼓で同じ演奏法がありますので、ルーツはそのあたりから来ているのでないかと言われています。

このフォホーが流れる6月のお祭りは、学校や地域コミュニティーで開かれます。子供達はダンスの練習をし、伝統文化を楽しむ中で音楽も覚えていきます。

フォホーは現在、若者向けにアレンジされたり、世界中で大規模なイベントやワークショップが年間を通して企画されています。特にヨーロッパで大人気なんだとか。

こちらも新しい風を取り入れて、次世代へと受け継がれていっているのですね。

「Forró Dance」で検索すると、世界中で行われたワークショップの様子が沢山出てきますので、是非チェックしてみてください。

 

お祭りの音楽といえば、やっぱりサンバ

左:サンパウロのサンバチーム「アギア・ヂ・オウロ」、右:日本人デザイナー・コシノジュンコさんデザインの衣装

お祭りの音楽といえば、サンバを忘れてはいけません。

コラムの冒頭にも書いたように、ブラジルはサンバ・カーニバルが有名ですが、もともとカーニバルはキリスト教の風習で、ヨーロッパ系の裕福なブラジル人たちが始めた祭りでした。

20世紀前半まではカーニバルの音楽は、「ブラジル音楽の種類」でも紹介したマルシャと呼ばれるマーチ、行進曲のような音楽が中心でした。

その後、1888年に奴隷制度が廃止されて、自由になったアフリカ系ブラジル人たちが職を求めてリオ・デ・ジャネイロに集まってきて、カーニバルにも参加するようになりました。

それをリオ市がオーガナイズして、各町内会にあるサンバの団体をパレードさせて、コンテストにしようという形になったのが1930年代なのです。

ブラジルではカーニバルは各州各地で行われています。しかし、世界的に有名なのが「リオ」のサンバカーニバルであるのは、このように歴史と文化の背景があったからなのですね。

サンバ・カーニバルは、もちろん私が住むサンパウロでも行われています。

2015年には私の故郷青森県から五所川原立佞武多の山車が海を渡り、サンパウロのサンバチーム「Escola de Samba Águia de ouro(SP)(アギア・ヂ・オウロ)」からカーニバルに出場しました。

日本とブラジル修好通商条約120周年にあたることから、演目テーマを『ブラジルと日本、120年の融合』としており、この時に作られたサンバチームの歌が日本とブラジルの友好の絆の意を込めた歌詞でした。

それに感動し、歌詞と踊りをバッチリ覚えて出場したのは今でも鮮明に覚えています。このように、音楽を通して日本とブラジルの友好関係を伝えるのは素敵だなと思います。

 

音楽で繋がる日本とブラジル

上:主催の皆さん、ブラジリアンプロダンサーの皆さんと

日伯友好交流といえば、ブラジルの音楽文化を日本人に知ってもらうためにブラジル日本青年商工会議所が主催した体験イベントが開催されました。

イベント当日、私は司会を務めさせていただき、ブラジリアンジャス奏者金田さんの伴奏でボサノヴァを演奏。

午前中はボサノヴァの歴史を聞き、ランチ時にはブラジル料理と伝統的な飲み物「カイピリーニャ」のワークショップが行われました。カイピリーニャは、カシャッサをベースにライムと砂糖を加えたカクテルです。

美味しいブラジル料理とお酒でリラックスしてもらいながら、私が演奏するボサノヴァ音楽を聴いていただきました。その後はブラジリアンプロダンサー達にフォホーのダンスステップを教えてもらい、参加者みんなで踊りました。

このようにブラジルの青年達が日本人の皆さんにブラジルを知ってもらいたい、体験してもらいたいという趣旨のイベントを作る事は友好の証として、とても良い行いだと思っています。

私もイベントのお話を聞いてから翻訳をしたり、連絡係になったりと積極的にお手伝いをさせていただきました。当時の体験イベントの様子はブラジル日本商工会議所のサイトからも見られます。

最後になりますが、ブラジルでは日本の音楽も人気です。演歌、民謡、J POPなど、老若男女のブラジル人が好んで聴いています。

カラオケが人気で、日系の地域コミュニティや全国、世界規模で行う日本の歌を歌うカラオケ大会もあります。

私も日本の音楽をステージで演奏する時もあり、有り難い事に沢山の方に聴いていただいています。このように音楽を通じて、ブラジルの方々と知り合えるのはとても嬉しい事です。

まだまだ勉強中のブラジル音楽、これからも沢山練習して日本へ世界へと発信していきたいです。

最後まで読んでくださり、ありがとうございました。それではまた!Tchau!!

Written by ひろみ(ブラジル)

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