ある週末の朝、愛犬と近所の海の見える公園を散歩しながら、自分の今の生活への充実感をかみしめていると、唐突に婚活中にしていた私の大きな勘違いに気がついた。
「私には愛が必要だったんじゃなくて、愛することが必要だったのだ」ということ。
以前の私は恋も仕事も「Have it all(全て手にいれる)」ことが目標で、「結婚できる、できない」をテストの合否判定のように捉えていた。
いつしか自分を好いてくれる人がいないことに劣等感を感じ、絶対に「誰か」から愛されなければならないと執着していた。自分から愛するということは、それほど深く考えていなかった。
愛犬を見つめながら気がついたのは、「自分を好いてくれる人を見つけるよりも、自分が好きで愛情を注げる何かがあるほうが、ずっと楽しい。そして愛情を注ぐ相手は人じゃなくてもよいのだ」ということだった。
パートナーがいなくて寂しい思いをしている人は、優しい人ではないかと思う。
そんな人は実は「愛される」ことではなくて、「自分の溢れんばかりの愛情を受け止めてくれる何か」を求めているのかもしれない。
「愛情を注ぐのは、趣味でも動物でもサボテンでもなんでもいい」と私は思う。
自分で書いたイラストがかわいくて完成品を見ていると心が温かくなるとか、作った料理がおいしくて嬉しいとか、自分が幸せに感じる事やその時間を愛し大切にすることだ。
人間が相手だと見返りを求めてしまうことが多いし、相手に思いが届かなかった時に傷ついてしまい、かえって自己評価が下がってしまうかもしれない。
ただ自分からの愛情や世話を無言で受け取ってくれるモノに接して、愛情を注ぐことでどれだけ心が満たされるか経験してほしい。
勘違いしてほしくないが、愛情の対象は「人」ではいけないということではない。
自分の心が満たされれば、自然と他人や他のことも気遣えるようになる。でも、まず「人」よりも自分が楽しめる「なにか」を愛情を注ぐ対象にすることが、私のお勧めだ。
そんな遠回りを経て、自分の好きなことを愛する大切さに気がついた私が今はどうしているかというと、不思議なことに犬を迎えてから数か月後に良縁に恵まれ、現在は夫と愛犬と共に南米エクアドルに住んでいる。
日本で色んな経験をした後、最愛の人と出会い、エクアドルという想像もしていなかった土地で暮らしていることを考えると、人生っておもしろいなぁとつくづく思う。
こういう変化が起こせたのも、自分のやりたいことをやり、好きなことに愛情を注いだからこそ、そのポジティブな気分がよいリレーションシップを引き寄せたのではないかと思う。
もし、このコラムを読んでいる方の中に、誰かからの「愛」を探している人がいたら、思い切り自分の好きなことやモノに愛情を注ぐことを試してほしい。
恋愛や結婚関係なく、人生を楽しく生きるコツは、「自分の好きなことをやること」だ。今まで感じたことのなかった充実感と温かい感情を味わうことができるかもしれない。
恋人はいなくても、仲良くしてくれている友人や家族、ペット、自分を満たしてくれる何かがあるのなら、バレンタインデーはそれらに感謝を示して、それを引き寄せた自分を誇りに思う日にしてみてはどうだろうか?
The best is yet to come.(人生の本当の楽しみはこれからだ)
Written by マットン美貴子(エクアドル)
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